燃え上がった勉強欲
友人に誘われ、フランクフルト・ブックフェアに行って来た。
毎年開催されている世界最大の本のメッセだ。
こっちではかなり有名で、重要なイベントなのは知っていたけど
実は、それほど興味がなかった。
本が嫌いなのではなく、好きで読むし日本からも何冊か持って来た。
ミステリー、SF、伝記、歴史物とかその辺の小説は好きだし
もちろんマンガも好きなんだけど
本のメッセっていまいちピンと来なかった。
要するに業界関係者向けのイベントで、版権獲得のための
取引の場所なんであって、一般の、ちょっと本を読むのが好きな
私ぐらいでは楽しめないんじゃないかと思った。
日本語の本なんかないだろうから、「読めねーじゃん」というのも
まずあったし。
そんな気持ちで、駅でメッセの広告ポスターを見ても
ああやってるのか、くらいにしか思ってなかったんだけど
誘われたのなら、そりゃ行きますよ。
去年も今年も、そのポスターのデザインがよくて、妙に印象に残って
たし、断るほど、そのイベントを嫌いになるような情報も
まだ入ってないし。
自宅からメッセ会場までは電車で20分くらい。
まあ近い。
会場に向かう電車の中で友人たちとぼーっとしていると
途中の駅で5、6人のコスプレした若いグループが乗って来た。
フランクフルトでは珍しいことでもなく、マンガとかアニメの
キャラクターとか、ヴィジュアル系のゴスロリみたいなのとか
もうなんだかわからいやつとか、そういうコスプレって
よく見るんだけど、そういう集団の数が、会場に近づくにつれて
どんどん増えて行った。
メッセでは日本のマンガのブースもあるし、噂ではコスプレしていくと
入場料がタダになるっていうのも聞いていたので、にこやかに彼らを
観察してたんだけど、なんかその中におかしなのも混ざってるのに
気付いた。
だいたいは「NARUTO」とか「ONE PIECE」とか、マンガの
キャラクターのコスプレが多いんだけど
なんかただ着物っぽくしたタオルケットみたいなのを着てるだけの
やつもいるし、もうこれはかぶりものなのでは?というピカチュウも
いたし、ただのおっさんが女装してるのも目撃した。
みんな無事に入場出来たのかは知らないけど
メッセ会場に着くと噂通り、世界最大というだけあって
人の数は多かった。
肌の色もいろいろだ。
同じように会場にも世界各国の出版社のブースがあって
それぞれ特色があっておもしろい。
フランスの出版社の本は表紙のデザインがかっこいい
のが多かったし、フィンランドにはやっぱりムーミンが
置いてあったし、タイとかになると本なんかはほとんどなくて
足マッサージとかしてた。
日本のブースも、あまり大きくなかったけど小学館とか、講談社が少し本を
並べてた。
けど日本に関係した出展では、やっぱりマンガがでかかった。
マンガだけの独立したブースも別であったし。
そこはもちろん、来る途中に見たような連中の目的地だから
いつの間にかそいつらに取り囲まれて迷子になりそうになった。
本以外にもベートーベンの手書きの楽譜とか
アインシュタイン直筆のメモとか、歴史的な価値があるものが
売りに出ていたり、活版印刷の実演とかはまあいいけど
各国の出版社の近くには、「本に興味を持ったら直接お越し下さい。」
と言うようにその国の旅行会社のブースも併設されていたり
怪しい雑貨屋があったりして、もう本とかほとんど関係ないじゃん
というものも結構あった。
結局、面白かったのかはちょっと微妙。
画集とか写真集とかデザイン、アート関連の本だったら問題ないけど
いろんな国の本があっても、言葉がわからないから
全部読んで回れないし、ほんと、雰囲気ってだけ。
知ってる作家の名前を見つけたからって
「あ、パウロ・コエーリョ。」って、ただそれだけだし。
印象に残ったといえば、前から気になっていた
今回の特別招待国トルコのためのPRポスター。
Bulent Erkmenってひとのロゴデザインらしいんだけど
いろいろな色を持つ魅惑的なトルコがシンプルに表現されていて
あちこちで目立っていた。
そのポスターも含めて、今回もメッセのパンフレットとか
イベントリスト等のデザイン全般を務めた「Network!」の仕事も
また気持ちよく目に映った。
そんな風にデザインに目が行くばかりで
それはそれで悪くないんだけど、あれだけの本を目の前にすると
今度はドイツ語、英語だけじゃなく
もっと他の国の言葉も覚えたくなった。
枯れかけていた外国語の勉強欲を掻き立てるきっかけになれば
行ってよかったって思えるんだろうな。
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